コミュニティ・ビジネスと地域金融
コミュニティ・ビジネスは、従来の営利追求型ビジネスと異なり、地域社会のネットワークに支えられて成立します。主役は地域コミュニティに生活の場をもつ人々です。地域コミュニティに利害関係や関心を持つ人々が地域事業を営むことによって、雇用が創出され、資金が循環し、地域コミュニティに対する責任感や当事者意識が醸成されるのです。
コミュニティ・ビジネスを支える人々には、次の4種類があります。
第一には「パトロン(後援者)」です。これらの人々はコミュニティ・ビジネスを物心両面で支援してくれる人です。
第二には「パートナー」です。そこには経営に参画してくれる人が必要です。つまり、経営に関与し、投資や出資をしてくれる人です。
第三には「サポーター」です。サポーターの中には無償ボランティアとして参画する人もいるでしょう。これはいままでの企業社会にはない要素です。
第四に「バンカー(コミュニティ・バンクのバンカー)」がいます。これはいままでの土地とか建物を担保にしてお金を貸すバンクではなく、事業性や地域への貢献度から判断してお金を貸す、本当の意味でのコミュニティのためのバンカーです。21世紀の共生社会では、こうしたコミュニティ・バンクのバンカーが求められることでしょう。もちろん、行政や企業からの協力、協賛や補助金を仲介したり、アドバイスをしたりすることも重要な業務の一つになることでしょう。顔の見える相互扶助の地域経済をつくっていくには、こういうコミュニティ・バンクも必要なのです。
山梨県には、今でも「頼母子講」が残っています。室町時代から江戸時代まで日本各地の農村には「頼母子講」がありました。「頼母子講」とは、簡単に言えば金融の相互扶助的組織です。組合員が一定の期日に一定金額の掛け金を拠出・プールしてファンドをつくります。そして、くじや入札によって、その資金を貸す人を決めます。ファンドの中から該当者に所定の金額を貸し出します。その人は、期日が経ったらその資金を返します。それを毎回繰り返し、組合員全員にお金が行き渡るまで行うものです。
しかし、現代に江戸時代の頼母子講をつくるのではなく、いまの時代にふさわしいコミュニティのための資金調達(ファンド・レイジング)の仕組みをどう作っていくのか。欧米ではコミュニティ・バンクのことをクレジット・ユニオンとも言っています。そういう資金規模が小さく、顔の見える関係のコミュニティ・バンクを日本でつくるにはどうしたらよいか。グローバルな嵐の影響が強い日本では難解です。ドイツにはエコ・バンクがありますが、テーマ型コミュニティの中で存在感を示しているそうです。(拙著「みんなが主役のコミュニティ・ビジネス」ぎょうせい 2006 に加筆)。
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