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2007年11月18日 (日)

新街道を行く(15)岡山路を行く、真面目な公務員さん

 最近、仕事で伺う瀬戸内海の笠岡諸島には、島づくり、島おこしのためのNPO法人があります。そこの営業部長に、市役所から出向する職員のMさんがおります。

 こうした出向の公務員さんは、だんだん住民に溶け込んでくると“公務員らしさ” を失って、住民のような頼もしさが全身にみなぎってきます。顔は兵士のように日焼けし頼もしく、また身なりはネクタイを外して作業ジャンパーを着て、くつは運動靴に変わっていきます。これは仕事を一生懸命やっていることの証であり、地域に溶け込んでいる証拠でもあります。

 細内所長はまちづくりの専門家として全国各地を渡り歩いてきました。最近知的フーテンの寅さんと呼ばれていますが、まちづくりの現場では彼のような人物をよく見かけます。公務員さんを現場に動員するということは、現場が少子高齢化し、現場で動ける人材が不足している証拠で、地域コミュニティは今、大変な状況にあります。離島の若者は、高校から本土や大都市に出て行き、盆暮れ、夏休み中にしか島に戻りません。島には働き場所がないからです。

 その瀬戸内海の離島の公務員Mさんは、あるときアクシデントで指に大怪我をし、指先を切断しなくてはならなくなりました。はじめて会ったとき、不思議に思いましたが、名刺をよくよく見ると、○○市役所の職員と書いてあるではありませんか。たいへんびっくりしました。公務員さんが日常の仕事で指に大怪我をするとは、余程の重大局面があったのでしょう。

 ある酒の席で彼にこっそりとその指のことを聞き出しました。彼の話によると、その離島の石は、大阪城の石垣にも使われるほどの良質の石材なのだそうですが、彼はテレビ局の中継の準備に張り切りすぎて、テレビに映る石材を何人かで配置するとき、思わず石と石の間に大切な指先を挟んでしまったそうです。すぐにドクターヘリで本土の大学病院へ搬送されましたが、挟まれた指先はもう戻りません。

 かくして指を大怪我したMさんは、その後ますます風格もつき、よりいっそう住民の中に溶け込んで、公務員であることを忘れさせてしまうほど、少し強面の陽気なお兄さんに変身していくのでした。所長は全国各地で講演をしてきましたが、全国広しといえども、仕事で指を失った公務員さんの話はとんと聞いたことがありません。彼には気の毒にも思いますが、つねに住民のためを思い、その作業のうえで起こったこと、そのこと自体は「勲章」もので、きっとその後の島伝説になることでしょう。

 今日も陽気に鼻歌でも歌いながら、きっと顔パスの海上タクシーに乗り込んで本土から島に向かっていることでしょう(拙著『団塊世代の地域デビュー心得帳』ぎょうせい2007年に加筆・編集)。

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