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2008年9月20日 (土)

コミュニティ・ビジネス 日韓フォーラム

 細内所長は昨日まで韓国に講演旅行に行ってきました。

以下は、同行したコミュニティ・ビジネス・ネットワーク運営委員・東海林伸篤氏の(CBNメルマガよりの転載)韓国レポートです

 2008年9月18日(木)、韓国のソウルにおいて開催されました「 コミュニティ・ビジネス 日韓フォーラム」にCBN理事長の細内信孝氏が招かれ、基調講演を行いました。その概要をお知らせ致します

「コミュニティ・ビジネス 日韓フォーラム」
~地域+オルタナティブ経済の希望探し‘コミュニティ・ビジネス’を論じる~

*日時:2008年9月18日(木/ソウル)~19日(金/完州)
*場所:忠武アートホール(ソウル市)、全北道立美術館(完州)
*主催:韓国希望製作所+日本希望製作所
*後援:韓国行政安全部, 完州郡, 農協中央会, 土地公社その他

◆概要
 2008年9月18日(木/ソウル)~19日(金/完州) の2日間にわたり、韓国の希望製作所主催によるコミュニティ・ビジネス日韓フォーラムが開催されました。「地域+オルタナティブ経済の希望探し‘コミュニティ・ビジネス’を論じる」と題し、地域の未来を創造していく手段としてコミュニティ・ビジネスが、重要な役割を果たすものと期待され、行われたものです。
「希望制作所(HOPE INSTITUTE)」は3年前に韓国において設立され、日本では林泰義氏が「日本希望製作所」の理事長を担ってます(事務局長は桔川純子氏)。
 フォーラムの主な目的は、次の3つ、コミュニティ・ビジネスに関する具体的で深い事例の分析と情報の共有」、「コミュニティ・ビジネスの韓国的モデルを構想する本格的な論議の場」、「地域づくりの新しい傾向についての市民的共感の輪と専門家のネットワークの形成」というものでした。
 今回のフォーラムをきっかけとして、日韓の交流が促進され、コミュニティ・ビジネスに関する議論が双方に深まることが期待されます。

◆2008年9月18日(木)細内理事長による基調講演
 フォーラム初日冒頭の講演をコミュニティ・ビジネス・ネットワーク理事長の細内信孝が行いました。その後、キム・ジェヒョン 氏(希望製作所 副所長, 建国大 教授)、キム・キョンニャン氏 (江原大学校 農経済学科教授)、ソン・ミリョン氏 (農村経済研究員教授)、キム・ジェボム氏 (国土研究員)、イ・ウォンジェ氏(ハンギョレ経済研究所長)の各氏を交えた討論会が行われました。

◆今回のフォーラム(2008年9月18日~19日)では、細内信孝CBN理事長のほか、次の方々が参加しました。
 広石拓司 (株式会社empublic 代表取締役, NPO ETIC senior fellow) 、伊佐 淳(久留米大学経済学部教授)、関原 深(株式会社インサイト代表取締役)、中森まどか(コミュニティビジネス サポートセンター 事務局長) 、中村陽一 (立教大学大学院21世紀社会デザイン研究科 ・社会デザイン研究所 教授) 、本田 節 (「ひまわり亭」オーナー) 、桔川純子(日本希望製作所・事務局長)※敬称略

◆開会挨拶
○金才賢/希望製作所コミュニティビジネス研究所長・建国大学環境学科教授
 このセミナーのために、日本より細内信孝コミュニティビジネス総合研究所長にお越し頂きました。はるばるお越し頂き深く感謝申し上げます。今回、リーマンの件は世界的規模で大きな影響を及ぼしておりますが、この事件をきっかけに、グローバルビジネスに対し、地域の独自的な経済サイクル、経済規模を構築していくことが、大切であるということを、改めて強く認識します。地域の歴史や資産を活用し、企業として成り立つものにしていくというコミュニティ・ビジネスの視点の重要性を感じます。韓国では、個人投資家を蟻軍団と言っていますが、個人が集まれば大きな力になります。
今回のフォーラムを皮切りに、韓国でもコミュニティビジネスが地域活性化のきっかけとなり、特に、農村地域において、意義のあるものになることを期待します。そしてひいては韓国全体に大安をもたらすきっかけになることを期待しています。

○イン・ジョンヨプ/完州郡守(市長)
 今回の日韓コミュニティビジネスフォーラムを企画頂き、我々に希望を与え、明るい光を照らして下さる、希望製作所に感謝申し上げます。地域創生の新しいモデルを自ら探し、自分たちを取り戻す方法を学びながら、農村にも希望をもたらすことができるかどうかが、地域のリーダーの役目です。
グローバルビジネスの影響により、地域は阻害され、人々は勇気を失っている状況です。現場の事情が分からない専門家による口だけの政策よりは、現場で一つでも具体的に何が出来るかを、今回のフォーラムを通して学びたいと思います。専門家の先生方がご提案して下さった考え方に基づき、地域の為に出来ることを実践していきたいと考えております。農村問題、地域問題は切羽詰まっている状況です。どうぞ宜しくお願い致します。

○ドックベエパク氏/韓国政府農林水産食品部次官  
 まずは日韓のフォーラムの開催おめでとうございます。また、日本よりお越し頂きました細内信孝コミュニティビジネス総合研究所長に深く御礼申し上げます。今まで、韓国の農村漁村は急速な産業化を経て、その結果として地域における悪循環が起こっておりました。そのために、これまで政府は、消費者と生産者を結ぶ株式会社を作るなど、いろいろな努力を講じてきました。農村体系プログラムを作り、1社1村として、都市の会社と農村との交流プログラムもありますが、これもうまく機能しておりません。政府の努力だけでは限界があることを認めざるを得ません。コミュニティ・ビジネスの体系のもとで、農村と漁村が発展すべき道に期待したいと思っております。日韓両国の専門家に参加頂くフォーラムが、有意義なものとなり、韓国の農村や漁村の地域がより良くなることを願っております。

○細内信孝/コミュニティビジネス総合研究所長・コミュニティ・ビジネス・ネットワーク理事長
 「コミュニティ・ビジネス」という言葉は、今から15年前に作りました。日本におけるコミュニティ・ビジネスは東京の両国で行ってきた、町の仕事起こしに始まります。これが日本のコミュニティ・ビジネスのスタートになっています。日本には、ソニーやホンダのような大きな会社の企業城下町が形成されていますが、一方で、スモールビジネス、コミュニティ・ビジネスが地域の再生やマネジメントには必要です。車の両輪として、両方必要なのです。障害者の車椅子をカスタマイズする事業もあります。
 「コミュニティ・ビジネスの効果」としては、人間性の回復、社会問題の解決、文化の継承・創造、経済基盤の確立などが考えられます。
 地域社会においてコミュニティ・ビジネスを実践していく上では、沢山の“暗いつぶやき”があります。コミュニティ・ビジネスは、地域資源を活用し、雇用を作り出します。いわば、コミュニティ・ビジネスは社会参画の場を作り出すものと言えるのです。イギリスでは「ソーシャル・エクスクルージョン(Social Exclusion)」という言葉があります。職を失うと社会的な排除に合ってしまいます。スキルを磨き、皆で地域を再生することが大切です。
 コミュニティ・ビジネスとは社会問題解決のために、ビジネスの視点を入れということです。ボランティアは2~3回でしたら続きますが、これが100回になるとどうなりますか?ビジネスの視点をつけるというのは、継続性を作り出すということなのです。経済の循環よりも文化の循環の方が尊く、その形成には時間がかかります。
 日本では、3,500人の過疎の村で年商7億円のコミュニティ・ビジネスの事例があります。”お焼き”を売ることで、それだけの売上げがあるのです。コミュニティ・ビジネスでは敢えて機械化しないことが重要です。働く人を確保するために、手作業でやってもらうことも、コミュニティ・ビジネスでは重要なことです。人に光を当て、その人を活かす視点も大事です。
 コミュニティ・ビジネスは、はじめは“クラブ”から始まることが多いです。そして、事業を起こし、顔の見える関係のある仲間が集まってきて、共同組合的組織になる。これが5~10年かかると、社会的企業、すなわちソーシャル・エンタープライズ(Social Enterprise)になるのです。
 100できたクラブのうち、2~3年後に残るのは1/3程度。そして社会的企業に発展するのは1つ。これが一般的な状況です。
都市間の地域間競争が行われる時代に入り、行政×中小企業×住民市民=相互補完の総力戦が重要になる時代です。これからは地域間競争の時代です。コミュニティ・ビジネスは自分起こし、社会問題の解決、地域の雇用づくり、共に生きる社会づくりに役立つのです。

 NPO法人について日本では35,000法人あります。このうちの半分がコミュニティ・ビジネスです。なお、地縁団体、有限責任の中間法人、LLC、企業組合、任意団体等のコミュニティ・ビジネスを含めると、現状のNPO法人の数とほぼ同じになるでしょう。

 事例:「おやき/小川の庄」です。コミュニティ・ビジネスではなるべく手作業でやり、そこに働く人が大勢入っていける、というのがコミュニティ・ビジネスです。

 事例:「(有)花農場あわの」です。これは女性たちによる企業であり、事業高が年間6千万円の農家レストランです。8人全員が伝票の積み上げや経理が分かります。年間5万人の観光客が来ます。メンバーは月1回、フランス帰りのオーナーシェフのところに学びにいっています。コミュニティ・ビジネスでもサービスの質をあげることが重要です。
また、誰でも分かるように、事業を進めて行く上では、具体的に物を持って示していくことが大切です。

 事例:「(株)まちづくりとやま」です。空き店舗の活用し地域再生を行っています。町の再生に向けたミニチャレンジショップのコミュニティ・ビジネスも出てきています。

 事例:「(有)ドンカメ」です。地産地消と環境保全を目的としています。街から出る生ゴミを集めて、肥料をつくっています。12,000人の町で、年商8千万円くらいあります。ここは、行政、商工会、小学校も関わりながら、皆で作り上げているというところに強みがある。いわば総力戦の成功事例の一つです。コミュニティ・ビジネスでは新しいものを使うのではなくて、タンクローリーなどは、中古品を活用しています。

 コミュニティ・ビジネスの成功への課題としては、社会的企業を意識して、マネージャーとそれを支える働き手を、いかに育成するかです。適任者がいなければ、マネージャーは公募するなどの方法もあります。コミュニティ・ビジネス起業者へのインセンティブを設けること他、といったことなどが挙げられます。会社を創業して5年くらいは赤字が出るものです。日本のコミュニティ・ビジネスの場合は、やる人よりも回りで応援する人の方が多いというジレンマを感じる場合も多いです。

以上、東海林伸篤氏からのレポートでした

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