市民の生活レベルが推察できるのも旅の醍醐味だ。
元旦翌日の仕事始めに写真を整理していたら、ユーロスターの切符が出てきた。
12年前の欧州における市民社会調査の旅で使用したものだ。フランスのパリからイギリスのロンドンまで欧州新幹線のユーロスターに乗車した。所長は鉄ちゃんなので、パリからイギリスのエジンバラまで飛行機なら90分もあれば着いてしまうが、あえて鉄道の旅を選んだのだ。
最初は2等車の切符を手配していたが、現地で1等車に替えた。車掌に確認したら1等車ではワイン付きの簡単なフランス料理が出るという。そこで1万円を追加してチェンジしたわけである。パリ北駅を出て10数分もたたないうちに広大な農地が広がってきた。フランスは農業大国であることがこのユーロスターに乗車すればすぐわかる。
やがてドーバー海峡の下にある海底トンネルに入るとわずか20分くらいであろうか、光が見えたと思ったら突然イギリスの荒涼とした風景にきりかわった。大陸と違った涼やかな風景が広がった。あっという間にロンドンの中心部ウォータールー駅だ。ここでロンドンタクシーに乗り替えて、国内線のあるキングス・クロス駅に向かった。少し手間がかかるがこれも旅の演出と思えば自然と心は高まる。さあこれからは、キングス・クロス駅からスコットランドのエジンバラ行きのインター・シティ特急列車の旅だ。ロンドンから4時間はかかる鉄道の長旅だ。
途中車内では面白い会話が飛び込んできた。ロンドンの有名な百貨店ハロウッズで買い物をしてきた母娘がいま買ってきた商品の品評をしている。棚にはハロウッズで買ったものが置いてあったが、母娘の買い物への関心は万国共通らしいことが彼女らの会話からもうかがい知れた。イギリスにおける地方の裕福な市民の生活レベルがこうして推察できるのも旅の醍醐味だ。彼女たちは途中のヨーク駅で下車した。
飛行機の移動もよいが、やはり旅を実感するには等身大の鉄道の旅の方が数段面白いものだ。特急列車はやがて風景を一変させ、岩石で黒茶けたゴツゴツとした要塞のような町、エジンバラ城の見えるエジンバラ駅に滑り込んでいった。パリ北駅を出てからエジンバラ駅まで、乗換えを含めて9時間の長旅であった。
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