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2011年4月17日 (日)

絆が地域を豊かにし、地域力を高める。

地域コミュニティの現場では、いま人と人との“絆直し”が求められている。そのことは、顔の見える関係がいまこそ必要で、絆が地域を豊かにし、地域力を高めていくからである。わが国は、これから本格的な少子高齢社会を迎えるが、新興国のようなめざましい経済成長はあまり期待できない。そして人口も経済も縮みの社会に突入しようとしている。筆者は民間の一研究者として、地域コミュニティの研究を二十年あまり現場で究明してきた。筆者が審議会委員や講座講師として参画してきた自治体では、あらためて人と人との“絆直し”が進められている。地域住民に参画を仰ぎ、住民本意のまちづくりを展開するために、基本条例を整備し策定してきた。人と人との助け合い、行政や住民間の協働の楽しさや辛さなど、そこには顔の見える関係が求められ、常に安心、安全の地域コミュニティが期待されている。そうした地域社会を維持できる地域コミュニティの大きさが高齢化の進行するコミュニティの現場で熱く議論されている。その基本となる大きさは小学校区相当がよいとされているが、財政的には中学校区相当にならざるをえないのが現状だ。

神奈川県内で高齢化率の高い自治体では、小学校区よりさらに緊密な半径300メートル圏内の地域コミュニティを“ふれあい活動圏”と名付け、住民同士の助け合いの仕組みを創ろうとしているが、肝心の財源はあくまでも行政の補助金頼みだ。そこで筆者は、住民自らが財源の確保に取り組める方法の一つとして「コミュニティ・ビジネス(以下CB)」を全国各地で紹介している。このCBは、「地域住民が主体となって地域の問題に取り組み、やがてビジネスとして成立させていく、地域コミュニティの活性化と地域の元気(地域活力の向上)づくりを目的にした事業活動である。」

そしてCBには、財源確保の面だけでなく住民の自主性を活かした“ふれあい活動”も目標の一つとして考えているが、それを継続して展開していくには、やはり適度な自主財源が必要だ。現場の地域コミュニティでは会社勤めをしてきた天引き納税者が多いため、どうしてもその行動は行政頼み(補助金の導入)にならざるをえない。このことは、多くの働く人々が毎年確定申告をしなくても済むことに起因している。自分が一体どのくらい税を納めているかという意識が欠落している。自ら納めた血税をチェックし、いかに地域コミュニティで有効に活用するかという公益活用の好循環が生まれにくい社会システムとなっている。こうした閉塞感のある地域コミュニティへのCB導入は、住民に起業意識を促し、自立心を育むことに寄与する。つまり住民自身の自分起こしにもつながり、さらには住民同士の新しい社会関係や協働関係づくりを育んでいく。このようにCBの地域コミュニティへの導入は、職住近接の働き方や暮らし方をコミュニティの現場で成立させ、安心できる生活圏(ふれあい活動圏)の形成に寄与する。地域の困った問題の解決や生活をサポートするサービスがきめ細かく地域コミュニティで展開されることにつながるのだ。また地域で活用されていない遊休資源を積極的に活用し、新たな事業展開が見込まれる。こうして地域に存在する全てのものが共生、共存しながら持ち前の機能を充分に活用することで地域は大いに活性化していくのである。

今後CBを地域で安定して展開するには、社会的企業(CB起業の発展形態の一つ)を目指し、地域で積極的に雇用の場づくりと社会貢献を推し進め、かつ地域住民との一体感を醸成することが求められるであろう。そうすることで人と人との“絆”が復活し、タケノコの芽のようにコミュニティの苗床から自分起こしや地域起こしをする“草莽の民”が生まれ、財政的にも健全な地域コミュニティが誕生するに相違ないのである。

(初出:生産性新聞2010.4.15号の拙稿『健全な地域コミュニティの形成にコミュニティ・ビジネスの導入を』より)

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