1枚のざる蕎麦
ある日の講演の帰り、蕎麦が食べたくて蕎麦屋へ入った。
その店の店主は一仕事終えて客間で居座り。ときおり従業員に指示を出していた。客も疎らだ。
『ざる蕎麦1枚で畳敷きの座敷に客を通すな』と店主は従業員に注意していた。その座敷への案内は客が望んだものだった。
たかが蕎麦1枚700円、されど客にとって貴重な蕎麦1枚ではないか。ましてや客足の遠のいた時間帯だ。
広い店内は空いているし、座敷といっても普通の畳敷きにテーブルがある状態だ。
客の意をくみ取ることができない店主の店は自ずと衰退をむかえていく。
たった1枚のざる蕎麦でも、客にとっては貴重な自然の恵みではないか。
最近そうした店が増えていてとても残念だ。