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2014年10月18日 (土)

福祉介護事業の利益率の適正さを考える

草の根の地域経済を見る視点を一つご紹介しよう(数字は概算にて表示)。今回は福祉介護事業の分野だ。

今わが国には1,700の区市町村、自治体がある。以前は3,300の自治体だったから半分に集約されたことになる。これも今後の少子高齢社会を見据えてのコンパクト政策だ。
そして地域コミュニティには、中学校が11,000校、小学校が22,000校あり、保育所は小学校数とほぼ同じの22,000、幼稚園は中学校数とほぼ一緒の13,000ある。しかし幼稚園や保育所の場合、定員に対する充足率が重要な指標だ。保育所の場合、共働き世帯の関係で100%に近い数字だが、幼稚園は少子化の影響で70%をきっているところも少なくない。そうした実態も影響してか、政府は来年度から両者の機能を備えた認定こども園(調理室設置)の認定手続きを簡素化する。さらには身近な郵便局が24,500局、何とコンビニエンス・ストアは50,000店舗を超える。最後に、高齢化率が世界トップクラスの26%のわが国では、39,000か所のデイサービスが存在する。どこのデイサービスもカラオケルームは満員盛況だ。元気シニアの介護予防の場となっている。こうしたサービスが本人1割負担ですむ日本は、シニアを大切にする良い国だ。
2000年の介護保険開始以来、身近な介護予防施設であるデイサービスは大きな伸びをしめしているが、今月発表された厚生労働省の経営実態調査によれば、平均で10.6%の利益率(売り上げに占める利益の割合)を上げているそうだ。これは少し儲けが出すぎている水準だろう。
大都市近郊のデイサービスでは、かつて団塊世代の方たちが家族で暮らしていた戸建て住宅をリニューアルして借り上げるなど、初期投資を軽くし、かつ、いつでも撤退が可能な事業スキームを構築しているところが少なくない。そうした事業スキームでも、定員が8名~10名の事業規模で、年間数千万円の介護事業が可能なのだ。その平均利益率10.6%を考えると、介護報酬の適正さに疑問符がつく数値だ。
同じように特別養護老人ホームも全国に6,300か所あるが、こちらも利益率は8.7%と労働集約型の事業所としては比較的高い水準だ。両者とも10%前後の利益率は、職員さんの人件費を低く抑えていることの査証だろう。介護報酬は3年ごとに改定されるが、今後も要介護の需要が大きく伸びる分野だからこそ、世間の眼は一層厳しいものとなっている。
わが国の零細中小企業約260万社のうち、70%が赤字決算となっている現状からしても、福祉介護事業者の売上利益率の適正さが一層求められるわけだ。

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