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2015年11月29日 (日)

60歳の戸惑い、無・年金期間の職探し

定年退職後の60歳から年金が出るということで自分の人生設計を考えていた人は少なくない。

しかし、それが年金支給開始年齢の先送りで、60歳の定年退職後に無・年金となり、65歳の年金支給日まで働くことを余儀なくされている無・年金者が最近目立ち、彼らが職探しに奔走している姿を目にすることがめっきり増えてきた。私は、これを『60歳の戸惑い』と命名している。これは、社会現象の一つと言っても過言ではないだろう。
例えば、金融機関のカウンター前で接客しているAさんは、現在63歳で4人家族。家族を養うため一部年金をもらいながら、金融機関の契約社員(1年契約で更新あり)として働き、生活の糧を得ている。
彼の契約社員としての金融機関からの収入は、年間で240万円(月20万円×12ヵ月)で社会保険付きである。これだけでは生活費が足りないので、(企業)年金も一部支給開始を早めて年間160万円ほどの生活費を捻出している。これで彼の年収は、240万円+160万円で400万円になるそうだ。だが生活は決して楽ではないという。
家族を養う親父の責務として400万円は確保しているらしいが、わが国の家族持ち勤労者の平均年収は520万円くらいだから、400万円という数字はかなり厳しいものがある。しかも子供は大学生だ。65歳からフルで年金が出るとAさんは言うが、その保証はない。現在70歳まで働くことを視野に入れて今後の働き先を考えているという。
Aさんの人生設計を大きく狂わせたのは40歳代の後半に起きた勤務先金融機関の破たん・廃業であり、その後の転職人生にあったという。有名国立大学を出たAさんの将来設計は輝かしいものであったが、人生何が起こるか分からないものだ。
現在勤務先において、60歳を過ぎても、希望すれば1年更新の65歳まで勤務できるようになったが、既に退職してしまった60歳代前半の人々や勤務延長を希望しない人々は、無・年金期間の職探しに苦慮しているのが現実の姿だ。3年前に1部上場企業の部長職で定年を迎えた彼は、現在ある企業の社員送迎バスの運転手をしているし、またある1部上場企業の管理職は、ある会社の社員寮の住み込み管理人として単身赴任中だ。
現実は、かなり厳しい労働環境で、現役時代の1/3や1/5の収入といった状況に追い込まれている。彼らは一様に『無収入よりはまし、社会保険もつくので65歳まで何とか頑張りたい』と意欲を見せているが、本音は違うところにあるようだ。
もし、適度に収入の得られる場が身近な地域コミュニティにあり、自らの発意で小さな仕事が起せれば、これにこしたことはないと彼らはいうが、地域デビューのワクチン接種をしていない元・企業戦士には、そうしたことは無理難題なのかもしれない。
一つは、硬直したわが国の社会経済構造(高度経済成長期の遺産構造)に問題があるのであって、かつ彼らに気づきを与えなかった企業にも責任があり、企業の内部留保が現在350兆円もあるという企業の近視眼的経営姿勢に真の問題がありそうだ。こうした「日本国の戸惑い」はまだまだ続く。例えば少子高齢化の問題や福祉介護の問題だ。
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☆あるデイサービスにて、仲間と囲碁将棋に夢中になる男性の高齢者たち。全国に通所のデイサービスは3万9千か所もあり、小学校の2万2千校を遥かに超える数だ。

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