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2022年8月18日 (木)

コミュニティ・ビジネス!その想いを再確認する

細内信孝著「新版コミュニティ・ビジネス」学芸出版社 2010年発行、はじめにから

 21世紀もすでに10年が経過し、ますます地球規模で共に絆を確認し、手をたずさえ、助け合う時代を迎えています。「共に」というのは英語のコミュニティ、コープ、コラボレーション、コミュニケーションなどに代表される「Co」から始まる言葉の接頭語で「共に分かち合う」ことを意味しています。人間関係がとかく希薄になりがちな世の中ですが、「共に分かち合う」ことが求められ、現代社会の諸問題を解決する基点のキーワードになっています。私はそうした「共に分かち合う」時代を意識して、その基点になる"コミュニティ"に注目し、いまから23年前に研究を始めました。そして今でもコミュニティが人々の注目を集めていることを真摯に受けとめようとしています。

日本においては、多極分散、地方分権、市民・住民自治など、地方の時代が叫ばれて久しいですが、東京一極集中は一向に改善されません。コミュニティはますます衰退し、住民の顔がまったく見えてきません。コミュニティの存在自体が希薄なのです。しかし一方、阪神・淡路大震災以降、NPO法が成立し、コミュニティの基礎集団としての役割や機能が、良い方向で見直されてきています。市民・住民が安全で快適な環境のもとに自立して生き生きと暮らしていくには、コミュニティが大切な要素なのです。コミュニティの活性化なくして、わが国の市民・住民自治は成立し得ないといっても過言ではないでしょう。
コミュニティという言葉自体は領域が広く、しかも奥行きが深く、アメリカの社会学者・マッキーバーの定義以来、その意味や定義については百家争鳴しています。私はそうしたコミュニティの定義を学問的に極めるのではなく、むしろ現場を歩く中で目のあたりにしたコミュニティの現実、たとえばそれは、空洞化する町工場、基礎集団としての機能が失われていく町内会や自治会、後継者問題で廃業や業種業態転換を迫られている駅前の商店街、若者が流出し高齢化率の高い農山漁村の過疎地など、コミュニティが抱えるさまざまな現場の問題から取り組んでいきたいと考えています。それらの解決に向けて、コミュニティの活力を生み出すコミュニティのための事業、すなわち『コミュニティ・ビジネス』を導入し、新しい時代のイノベーション手法として、実際の地域コミュニティを再生したいと考えるのです。
本書は、コミュニティにおける地域社会創造の方策を集大成したものです。各地で地域活性化に取り組んでおられる方、商店街や中心市街地を地域コミュニティの生活基点にしたいと考えている方、社会起業家をめざしてコミュニティの現場で社会的な問題を解決するための仕事起こしをしたいと考えている方には、特に読んでいただきたいと思います。
旧版の『コミュニティ・ビジネス』を1999年10月に中央大学出版部より上梓してから、すでに11年が経過しました。このたび改訂するにあたり中央大学出版部の承諾を得て、京都の学芸出版社よりあらたに出版する運びとなりました。その後11年間の全国各地を巡る地域探訪への厚みも加わりました。日本各地における講演やコミュニティ・ビジネス起業塾は、とうとう1500回をこえました。最近は、韓国をはじめ海外からも講演の依頼が来るようになりました。(細内のFBと同時配信)

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